エスペランサ その1
東京・高円寺にある老舗タブラオ「エスペランサ」は、
今年11月で36周年を迎えたそうだ。
私がフラメンコを始めたばかりの頃は
ここによくライブを観に行っていた。
あるときは、観客の中に女優の山口智子さんもいらしていて、
それはそれで心躍ったものだ。
舞台で踊る踊り手さんたちは、もう別世界の人たちで、
まだセビジャーナスやブレリア、ルンバくらいしか
習っていなかった私は、
ソレアの黒い響き、アレグリアスの輝くコンパス、
タラントの哀愁に心震わせ、
舞台の背後に描かれているアルバイシンの風景は、
そのまままだ見ぬスペインへの憧憬となった。
今までのフラメンコ歴の中で、このうえなく幸福な、
しかし抜き差しならぬ不幸なドゥエンデ(魔力)に
とらわれた瞬間が3回ある。
その最初の瞬間が起こったのは、ここエスペランサだった。